お酒の新年度(BYについて)

日本酒とカレンダーの写真

4月に入り、新年度を迎えられた方も多いことと思います。

学校では新学期、また多くの企業も新年度を迎える4月は、日本では一般的には “新しい年度の始まり” といえますが、日本酒の酒づくりにおいては、新年度は4月ではないことをご存知でしょうか

今回は、酒づくりにおける「酒造年度」についてご紹介します。

日本酒の酒造年度「BY」

日本酒の酒瓶ラベル、BYの文字の写真

お酒のラベルなどに、「BY」という文字を見たことはありますか 「BY」とは「Brewery Year」の頭文字で、「酒造年度(醸造年度)」のことです。

日本酒では、この酒造年度の始まりは 7月1日 からとなっていて、7月1日 から 6月30日 までを醸造の年度の区切りとして酒づくりが行われています。

つまり、

  • もしラベルに「29 BY」と書かれていれば、平成29年7月1日〜 平成30年6月30日 の間につくられたお酒
  • もしラベルに「2019 BY」と書かれていれば、2019年7月1日〜 2020年6月30日 の間につくられたお酒

ということになります。

ラベルには「製造年月」も書かれていますが、こちらは出荷のために瓶詰めを行った年月で、「BY」とは異なりますのでご注意!

また、BY=使用したお米の収穫年度、とも限りません。その年の秋に収穫したお米で酒づくりを行う場合は収穫年と同じになりますが、前の年のお米や古米を使った場合など、収穫年と醸造年度が異なる場合もあります。一般的には、上槽(もろみを搾る工程)した時期を基準にしているようです。

<ラベル表記の例> 

日本酒の酒瓶のBY表示の写真
(左から)
平成29醸造年度(和暦表記、令和の場合はR2BYと書かれます)、2019醸造年度(西暦表記)、平成30醸造年度(醸造年度の他に原料米収穫年度も記載されています)

さて、この「酒造年度」ですが、もともとは、酒税の税収のもととなる「酒類の製造量」を把握することを目的に、明治29年に酒造税法(現在の酒税法)で定められたものです。制定当時は 10月1日 から 9月30日 までを区切りとしていましたが、昭和40年の通達で現在の 7月1日 からに変更されました。

でも、なぜ日本酒の年度の始まりは、4月からではないのでしょうか? それは酒づくりの1年間のサイクルに関係しています。

酒づくりの年間スケジュール

現在では空調設備の整備などにより、年間を通してお酒をつくる(四季醸造)ところもありますが、多くのお酒は、秋に収穫されたお米で冬から春先にかけてつくられます。気温が低い寒い時期の方が温度管理がしやすく、質のよい日本酒をつくれることが大きな理由です。

酒づくりの年間のスケジュールをみると、地域や酒蔵さんにより時期は多少異なるかもしれませんが、ざっとこのような感じで進められます。

  • 5〜10月頃:お米の栽培(田植え〜収穫)
  • 10〜4月頃:お酒の仕込み 
  • 11月頃〜 :「新酒しぼりたて」の出始め
  • 4月頃〜  :お酒の貯蔵・熟成
  • 9月頃〜  :「ひやおろし」の出始め
酒づくりの年間サイクルの図

お酒の仕込み始めは、春に田植えをしたお米が新米として出始める頃。10月くらいから(早いところでは9月頃から)、4月頃までがお酒の仕込みの期間となります。蒸米づくりの始めには「甑立て」、そのシーズンの蒸米を作り終えたときには「甑倒し」という行事も行われます(*1)。また、仕込みを終えて新酒ができた頃には、お披露目と地元への感謝もこめた「蔵開き」を行う酒蔵さんもあります。
 (*1) 甑(こしき)とは、酒米を蒸すための大型のせいろのような蒸し器のこと。

酒づくりのサイクルを終えた4月以降は、お酒は貯蔵され、秋にはひと夏かけて熟成された “ひやおろし” として出荷されます。

この酒づくりのサイクルが、日本酒の年度の始まりが4月とはズレている理由です。このように冬から春にかけて行われる酒づくりでは、3月末で年度を区切ると途中で年度が変わってしまい、税務上あまり都合がよくなかったことが背景にあったのです。

「BY表示」の最近

日本酒の酒瓶が並んでいる写真

一般的に日本酒は、ワインのように醸造年を表示して複数年にわたって売られるスタイルよりも、つくったお酒をその翌年内で販売し飲み切るのが一般的で、ラベルへの「BY表示」も必須事項ではありません。

しかし最近は、熟成させた日本酒・ヴィンテージの日本酒の価値が再認識されてきていることや、ワインではブドウの収穫年が表示されることを意識して、醸造年度や原料米の収穫年を表示するケースも増えてきているようです。

こんなふうに、日本酒のラベルの表記も少しずつ変化しているのですね。近頃飲んだお酒に、BY表示はされていましたか? たまにはラベルにも注目してしげしげと読んでみると、違う発見があるかもしれません。

醸造年度とお酒の味わい

普段お店で飲むときは “醸造年” を意識して飲むことはほとんどないと思いますが、たまには醸造年を意識して楽しんでみるのも、日本酒の味わいの新しい発見につながるかもしれません。

酒蔵さんによっては、同じ銘柄でも醸造年が異なると、アルコール度数や日本酒度などが微妙に異なるものもあります(*2)。天候やお米が違うからということだけでなく、理想の味へ向かっての変化やチャレンジかもしれません。

また、“醸造年” を意識して「熟成酒」を選んでみる、という楽しみ方もあると思います。特に長期熟成酒では、色も琥珀のような色合いに変化して、ブランデーのようなフルーティでコクのある、いつもの日本酒とはまた別の味わい深さを楽しめます。まだ飲んだことのない方はぜひ試してみてください!
 (*2) アプリの銘柄情報では、できる限り最新のデータを掲載しています。

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「BY」についてご紹介しました。季節に沿った酒づくりならではの年度の設定というのも、ちょっと面白いですね。

世間的には新年度を迎える春ですが、日本酒ではもうすぐ6月には年度末。新酒の時期もそろそろ終わり。夏酒・秋酒が来れば、もう次のお酒の仕込み時期。気が早すぎますが、また次の年のお酒が楽しみになります。


いつも楽しくWakuWakuを忘れずに。
そんな時間のお供をしてくれるお酒にも感謝して、今晩もカンパイ!!